グレート・バリア・リーフのサンゴ礁が半分まで減少
世界最大のサンゴ礁地帯であるオーストラリアのグレート・バリア・リーフも気候変動の影響を免れていません。同地域のサンゴ礁は過去25年ほどで半分にまで減少し、修復への取り組みがおこなわれています。
世界最大のサンゴ礁が急速に減少
オーストラリア北東部クイーンズランド沖に拡がるグレート・バリア・リーフ(Great Barrier Reef)。全長約2300キロメートル、面積約35万平方キロメートルに及び、域内には造礁サンゴによって形成された大小さまざまな何千というサンゴ礁が点在しています。世界最大のサンゴ礁地帯で、1981年に世界自然遺産に登録されました。世界中からの観光客で賑わい、新型コロナウイルス蔓延以前は、年間約40億ドル(約4100億円)の観光収入をオーストラリア経済にもたらしていたといいます。
このグレート・バリア・リーフも近年の気候変動による影響を免れていません。最近発表された研究によれば、1995年から2017年までの間に、グレート・バリア・リーフでは急速にサンゴが死滅し、およそ半分の規模にまで減少が進んでいることがあきらかになりました[1]。
とくに被害が大きいのはミドリイシ
この研究に参加した学者は、枝状やテーブル状のサンゴなどの大きな種が最も影響を受けており、25年前に比べて最大で80~90%激減したとコメントしています[2]。とりわけ2016年・17年に発生した大規模白化を境に、グレート・バリア・リーフの最北部からはほぼ姿を消しているそうです。
枝状やテーブル状のサンゴというのは、サンゴ礁を形成するイシサンゴ類で最大のグループであるミドリイシ(Acropora)のことです。インド洋から西太平洋にかけて棲息しています。
ミドリイシは比較的成長の早い種が多く、年間に最大20センチも成長する種もあります。しかし、いちど群生が死滅してしまうと、早期の自然快復は困難です。群生の快復には、生き残ったミドリイシが産んだ卵や幼生が定着し、産卵可能になる成体にまで成長する必要があります。幼生から成体に成長するまでには、概ね3年ほどかかります。
最新のテクノロジーを駆使した保全活動
グレート・バリア・リーフでは、多くの環境保護団体がサンゴ礁の人工修復に尽力しています。このうち、「Reef Recovery 2030」として全方位プロジェクトを実施しているグレートバリアリーフ財団(Great Barrier Reef Foundation)では、最新のテクノロジーを駆使して、様々な取り組みをおこなっています。
具体的には、サンゴの移植や受精卵の散布、食害生物の除去といった従来の海洋活動では水中ロボットをつかって作業の効率化をはかっているほか、生分解性の日除けの設置、ラボでの生態研究をもとにしたストレス耐性強化のためのゲノム編集、サンゴ片を凍結保存して後世に残すなどの取り組みをおこなっています[3]。
オーストラリア政府による調査では、2020年~2021年のシーズンは、サイクロンや高水温による大きな被害がなく、グレートバリアリーフの全域で快復が進んでいるそうです[4]。しかし、2015年のレベルにまでサンゴ礁が再生するには、まだかなりの年数が必要なようです。
補注・参考文献
- Dietzel Andreas, Bode Michael, Connolly Sean R, Hughes Terry P. “Supplementary material from “Long-term shifts in the colony size structure of coral populations along the great barrier reef””, The Royal Society, London(2020)
- AFP BB News「豪グレートバリアリーフのサンゴ、25年で半減 研究」 2020年10月15日
- “RESTORING REEF ISLAND HABITATS“, Great Barrier Reef Foundation(2021)
- Great Barrier Reef Marine Park Authority, Australian Institute of Marine Science “REEF SNAPSHOT SUMMER 2020-21“, Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation(2021)