衛星画像によるサンゴ礁のモニタリングがスタート
全世界のサンゴ礁を衛星画像で網羅した世界地図「Allen Coral Atlas」がリリースされました。リアルタイムでのモニタリングでサンゴ礁の保全活動に活用されます。
サンゴ礁の世界地図
世界に分布するサンゴ礁の総面積は60万平方キロメートルに及びます。これまでも各地の研究機関の情報を網羅したサンゴ礁のデータベースはありましたが、近年進んでいる白化によるサンゴ礁の減少については定点調査による追跡であったため、網羅的な把握は数理モデルによる推定で算出されてきました。
今回リリースされた「Allen Coral Atlas」(https://allencoralatlas.org/atlas/)では、高解像度の衛星画像を活用することにより、世界中のサンゴ礁をリアルタイムでモニタリングすることが可能です[1]。サンゴ礁の現象を正確に把握することができるほか、白化が発生したエリアをピンポイントで特定し、必要な保全手段を効率的に実施することが期待されています。
Allen Coral Atlasとは?
Allen Coral Atlasは、米マイクロソフト社の共同創業者である故ポール・アレン氏が創設した財団による支援によって、アリゾナ州立大学、Vulcan Inc.、クイーンズランド大学、プラネット、ナショナルジオグラフィック協会によって、2021年5月に公開されました。
Allen Coral Atlasは、数百万枚に及ぶ高解像度の衛星画像と地球の地形データ、潮流データなどを組み合わせたオンラインマップです。水深約50フィート(約15メートル)までの海底の地形を、サンゴ・砂・礫・岩・藻場・泥地といった繁殖生物群別に、解像度3.7メートル単位で把握することができます。サンゴ礁を細かく把握できるほか、地球の軌道を周回する衛星の画像によって、地形の変化やサンゴの白化を高頻度で把握することが可能です。
サンゴ白化を検出する仕組み
サンゴが繁殖するエリアについては、2週間の間隔で白化の発生を検出する機能を仮実装しています。
もともとサンゴは海藻と同じく光合成をおこなうために似た反射スペクトルをもちます。そのため、生きたサンゴと白化によって死滅したサンゴを覆う藻類とを区別することは、従来のリモートセンシングだけでは困難という課題がありました[2]。
Allen Coral Atlasでは、サンゴの繁殖エリアを撮影した衛星画像をピクセル単位で色の変化(明度)を自動で解析するアルゴリズムを実装しています。明度が継続的に上がっている場合は白化と推定する仕組みを取り入れることで、ピンポイントでサンゴの白化の発生を検出することを可能としています。
Allen Coral Atlasのオンラインマップとデータベースは無償で公開されており、サンゴ礁の教育と研究、保護のために活用されることで、今世紀中に絶滅するといわれているサンゴの保全に貢献することが期待されています。
補注・参考文献
- Makenna Flynn “World’s First Satellite-Based Coral Reef Monitoring System Deploys Globally, Paving the Way for Innovation Driven Conservation“, Allen Coral Atlas Blog, May 19 2021.
- 灘岡和夫・Enrico C. Paringit・山野博哉「サンゴ礁のリモートセンシング」『日本のサンゴ礁(日本語版)』環境省・日本サンゴ礁学会,2004年,95-108頁。