ライブロックのキュアリング

ライブロック, リーフアクアリウム

天然ライブロックや海洋養殖の人工ライブロックには多様な生物が棲息しています。水槽内環境に適合させるために収容前のトリートメントが必要とされています。

ライブロックは“海のいきものたちのコロニー”

 ライブロックは、海中にあることで、水質を浄化するバクテリア(細菌)、藻類(植物プランクトン)、海草類、サンゴ、カイメン、ケヤリ、貝類などの付着生物、アミ、ヨコエビなどの甲殻生物が住み着くなど、“海の生きものたちのコロニー”として機能しています。人工ライブロックであっても、海洋で養殖したものは、養殖期間が長ければ長いほど、天然ライブロック同様に多様な生物相を備えます。

ライブロックの表面に棲息する付着生物。カイメンにケヤリムシと海藻が集合してコロニーをつくっている。

 

天然ライブロックはキュアリングが必要

 生態系を擬似再現するリーフアクアリウムにおいて、ライブロックは、これら生態系の基層に位置する小さな生物たちを水槽に導入するために役立ちます。

 しかし、同時に小さな生物たちは環境の変化に弱く、海洋からの引き揚げから出荷までの間に大きなダメージを受けます。また、水槽の水質との不適合によるダメージも生じやすいため、一般に天然採取や海洋養殖のライブロックは水槽に収容する前にキュアリングが必要とされています。

キュアリングは水槽導入前の生物淘汰

 キュアリングとは、死滅した付着物をライブロックから剥離し、水槽内に持ち込まれる有機物を減らすことが目的です。キュアリングすることで、有機物の過剰による水質悪化を防ぐことができます。

天然ライブロックに棲息していたカニ。サンゴを飼育するリーフアクアリウムでは、カニを捕食する大型魚を飼育することは稀なため、甲殻類にとっては、水槽は天敵がいない快適な空間となる。

 

 また、ライブロックの細孔に棲息する有害生物―海水魚にとって天敵となりうるカニやシャコ、サンゴに有害なヒラムシや肉食性の巻き貝など―を除去する目的でおこなうこともあります。

キュアリングの方法

 キュアリングは、バケツなどの水槽と切り離した環境で、水槽と同じ水質の海水をつかっておこないます。

 冬季や夏季などで水温の変化が激しい場合には、サーモスタットやクーラーなどをつかい温度を一定に保つようにします。キュアリング中は、エアーポンプや水流ポンプをつかい、できるだけ水のよどみがないようにします。予備のプロテインスキマーなどの器材かあればそれらもつかい、できるだけ水槽内の環境に近い状態にします。

キュアリングの目安

 キュアリングの要不要や時間的な目安といったものはありません。一般にはライブロックの臭いをかいで、磯の香りがするならば問題なく、悪臭がする場合にはキュアリングが必要でしょう。

 ライブロックのキュアリングは、必ず必要というものではありません。むしろ、ライブロックの導入にバクテリアを含む生物相の多様化を期待するならば、キュアリングはせずに、そのまま水槽に収容することが望ましいでしょう。

 すでに立ち上がっている水槽でサイズが大きく、それに対して収容するライブロックの量が少なければ、多少のダメージがあってもキュアリングせずに収容することも可能です。水槽の水質を急激に悪化させなければ構わないからです。死滅した生物は水槽内の微生物や補食生物によって消化吸収されます。

陸上養殖の人工ライブロックはキュアリング不要

 陸上養殖の人工ライブロックは、天然採取や海洋養殖のライブロックに比べると、キュアリングが不要というメリットがあります。輸送時間が短いため、適切な梱包による温度管理がなされていればダメージがほとんどありません。

 また、もともと水槽内の環境に近い菌種が棲息しているため、水槽に収容したときの適応度が高いからです。さらに、カニやシャコ、肉食性の巻き貝といった水槽にとって有害な生物の侵入も防ぐことができます。

 

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