ライブロックの水槽レイアウト

ライブロック, リーフアクアリウム

ライブロックの岩組みは水槽のレイアウトでもっとも重要な作業です。美しい岩組みがされたレイアウトは、ライブロックだけでも十分に見る人を魅了します。

 リーフアクアリウムにつかうライブロックは、水槽の容積(水量)10リットルあたりライブロック1キログラムを収容することが一般的な目安とされています。これは、主にサンゴを飼育することを念頭に、サンゴが触手を伸ばしても十分なスペースと通水性を確保することなどを考慮したうえでの値です。もっともポピュラーな横幅60x高さ36x奥行き30センチ水槽の容積は約56リットルですから、水槽につかうライブロックの量は約5.6キログラムとなります。

 リーフアクアリウムでは、海水魚やサンゴなどの生体の飼育と、水中生態系の擬似再現という目的を達成することを条件としたうえで、水槽全体の鑑賞性も期待されています。水槽容積のかなりを占めるライブロックのレイアウトは、水槽の鑑賞性を決める要素として、重要な位置を占めるといえます。

 ライブロックは岩石のなかでは多孔質で軽量ですが、水槽内で岩組みが崩れると、生体へダメージが生じたり、水槽や器具を損傷させる恐れがあります。このため、ライブロックをもちいた水槽レイアウトの基本は、安定した岩組みになるようにレイアウトすることが第一になります。ライブロックどうしを接着剤や結束バンドで固定することも、岩組みを安定化させるには有効です。そのうえで水の淀みが発生しないように、主として底面には土台や脚となる岩を複数個配置し、その上に適度な隙間をあけて、水通しがよいように岩組みをしていきます。

 ライブロックのレイアウトで考慮すべき造形美は、主としてプロポーション(比例)とバランス(均衡)からなります。普段耳にするキーワードとして、前者は“黄金比”、後者は“シンメトリー”などがあります。

 後ほどご紹介する島型レイアウトに、黄金比のスケールを組み合わせたものです。意図せずとも、かなり近い形状になっていることがわかります。黄金比とは、a:b=b:(a+B)となるように線を分割したときの比率で、古代ギリシャの時代から多くの建造物や芸術作品に取り入れられてきた理論です。近似値は1:1.618で、水槽の規格サイズにも取り入れられています。

 人間はシンメトリー(均衡)に親近感や安定感を感じます。自然界に存在するシンメトリーのもっともオーソドックスなものは重心です。上部から下部にかけて三角形のシンメトリーを構成します。もともとライブロックのレイアウトは安定性の点で重心が下に位置し、自然と三角形のシンメトリーを構成します。ただし、対称は人工的な不自然さが際立つため、左右を非対称とすることで不自然さを解消しています。この不等辺三角形の構図は、生け花の型と同様であるといえます[1]

 ライブロックのレイアウトで造形美を実現するポイントを以下に6項目としてまとめてみます。

ライブロックの水槽レイアウトに共通する造形ポイント

  1. 岩組みの全体形状は、左右・上下・前後の3方向のうち、2方向は非対称、1方向は対称とする。
  2. 岩組みが不安定にならない範囲で、光の明暗ができるように、アーチ状の洞窟や張り出しによる庇をつくる。
  3. サンゴを置く土台部分以外には平たんな場所をつくらない。
  4. 大きめのライブロックは後方と両端に、前方と中央部は小さめのライブロックを配置することで、奥行き感と拡がりを演出する。
  5. 手前の中央より左右どちらかずらした位置に、独立した島型もしくは張り出し部分をつくる。
  6. 組み合わせるライブロックの色味は合わせる。

 以上の造形ポイントとともに、ライブロックのレイアウトには一定のパターンがあります。水槽のサイズや構造の条件で採用できるパターンは左右されますが、おおむね次にご紹介する4つのパターンは、小型から大型の水槽まで適用可能なオーソドックスなものです。以下では、CORERALリーフロックをつかったライブロックのレイアウト例をご紹介します。

水槽の中央にライブロックを積み上げる“島型レイアウト”

※このレイアウト例で使用した水槽は、横幅40×高さ28×奥行き25センチ・容積約25リットル、CORERALリーフロックは2.945kg(Lサイズ1個、Mサイズ3個、Sサイズ1個)です。

 中央にライブロックを積み上げたレイアウトです。リーフアクアリウムでもっともオーソドックスな方式で、水槽のサイズにかかわらずレイアウトが可能です。前述のように、プロポーションとバランスをとりやすい利点があります。岩組みの安定度が比較的高く、岩組みの周りに水流をつくることができます。

左右にライブロックを積み上げてふたつの島をつくる“双子山型レイアウト”

※このレイアウト例で使用した水槽は、横幅40×高さ28×奥行き25センチ・容積約25リットル、CORERALリーフロックは3.440kg(Lサイズ1個、Mサイズ3個、Sサイズ2個)です。

 左右にライブロックを積み上げたレイアウトです。比較的横幅のある大きめの水槽で、魚の游泳空間を大きくとりたいときや、空間を演出したいときに有効な方式です。左右それぞれを独立した山状に積み上げるほか、どちらか片方を水槽の壁面に密着させるように積み上げることで、起伏のあるダイナミックな景観をつくることもできます。左右に起伏があるため、水流の設定は調整が必要です。

水槽の背面を岩肌にみせるバックウォール

※このレイアウト例で使用した水槽は、横幅40×高さ28×奥行き25センチ・容積約25リットル、CORERALリーフロックは4.932kg(バックウォールとLサイズ1個、Mサイズ2個、Sサイズ2個)です。

 バックウォールをつかったレイアウトです。水槽の背面が岩壁になることで、自然な水中景観を再現できると同時に、前面に海水魚の游泳空間を大きくとることができます。傾斜が急な断崖風に岩組みをおこない、上部をオーバーハングにすることで、海底の落ち込みで水深が急に深くなるドロップオフのイメージの再現も可能です。壁面にヤギ、トサカ、キサンゴなどの陰日性サンゴを配置すると、より自然に近い情景を再現できます。

サンゴの配置と水の循環を考慮した“ひな壇型レイアウト”

※このレイアウト例で使用した水槽は、横幅40×高さ28×奥行き25センチ・容積約25リットル、CORERALリーフロックは2.896kg(天板にシェルフタイプ、土台にMサイズ2個)です。

 盆栽型とも呼ばれる手法です。枝状のライブロックや人工ライブロック、アクリル素材などをもちいて、岩組みそのものを浮かすかたちにします。人工ライブロックでは、テーブルシェルフタイプを天板につかいます。自然の情景イメージからは少し離れますが、サンゴにとっては生育条件が良く、サンゴが主役として見栄えのするレイアウトです。ライブロックが底面に密着せずに水が流れやすいため、水質維持に効果的です。

補注・参考文献

  1. 伊達千代『デザインのルール、レイアウトのセオリー』エムディーエヌコーポレーション、2010年

 

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